はらっぱ  
都留岩 加寿男
   忘れていた感触だった 
   忘れていた匂いだった 
    
    
   子供の頃から 何度も見る同じ夢 
   曇り空の下 見渡す限りの大草原で 
   背の丈までも あろうかという 草が 
   風に たなびき ゆれている 
    
   君も 同じ夢を見たことがあるか 
   胸の奥から 絶え間なく湧き出て 
   噴出し やむ事の無い漠然とした不安を 
   象徴するかのような 色彩の無い夢なのだ 
    
   裸でいるような 心持の僕は 
   小高い丘の上に ひとり立ち 
   肌寒い風に 打ち震えている 
    
   頬にあたる この風の感触 
   鼻腔の奥に 若草のような匂い 
    
   僕は 何かを 待っている 
   空から降りる 一筋の光か 
   火柱が立ち 大地が裂ける様か  
    
   何かが始まろうとしている 
   何かが終わろうとしている 
    
   忘れていた感触だった 
   忘れていた匂いだった 


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